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『鏡像二人』
 なんとなく書いた、紗々のプラリプっす。
まぁ、来るまでの話ということで。


『鏡像二人』

 私には「お父さん」と「お母さん」がいない。
もちろん遺伝子的にその関係にあたる人物はいたけれど、彼らはそう呼ばれることも、それに当たる人間関係を私を築くことも拒絶したから、いないと言ってもかまわないと思う。
血縁による人間関係を築くことを禁止するのは、私の遺伝子的父母が所属した団体の決まりの一つ。
外に出ることを禁じられた私は、それを不思議にも思わなかった。
 外から見れば奇妙な生活は、私が考えもしなかった団体の終焉とともに終わった。
それと同時に、私は本当に「お父さん」も「お母さん」も失った。

「織部さん、なぜ私を助けたの?」

 わたしには名前がない。
少し前まで、私は織部紗々という名前だったが、その名前は苗字ごと拾った子供に譲ってしまった。
今は良い名前を探している最中だが…最近の名づけの本は、どうしてこんなに妙な名前であふれているのだろう。
……その新しい紗々を、私は仕事の最中に見つけた。

「一人だけ生きていたから」

 その日、ゴーストの襲撃があった、らしい。
いわゆる親世代の能力者を数人擁するだけ、子世代にいたっては私一人しかいない集団では、押し返すこともできないほどの集団だったという。
その真ん中に私はいたはずだったのに、その最中のことを何も覚えていない。
覚えているのは、その日の朝、眼を覚ましたときのこと。
そして、瓦礫の中で、もう一度眼を覚ましたこと。
 訓練の成果か、近づいてきた人の気配が気付けになった。
逆光の中で差し伸べられた手に、私は本能のままに必死で自分の手を伸ばした。
敵も味方もわからなかったのに。

「後は、生かして欲しいと頼まれた。……腕に」

 奇妙な宗教色を帯びた結社と、わたしの所属する結社とは敵対していた……ということになるのだろうか。
そこの起こす厄介ごとを片付けているだけのような気もしたが……。
まぁ、人の結社同士では、「やりすぎ」てはならなかったのだろう。
 しかしそれも、あの日で終わった。最大の厄介ごとを遺して。
ゴーストの集団に襲われて、山奥にあったその結社はあっけなく壊滅してしまったのだ。
目標を失った大群に、人里に出てこられてはたまらない。
第一世代能力者だけで掃討部隊が編成され、わたしもその一員として現場へ向かった。
ゴーストを一体につき数人がかりで片付けながら、施設中をまわった。
 あらかた片付いた後、瓦礫の小山に登ったわたしが見つけたのは、体の上に砂糖のようにガラスの小片をまぶした子供の姿だった。
瓦礫の谷間、おそらくは倒れた壁のちょうどそこにガラス窓があったためにできた空間に、子供は倒れこんでいた。
長い黒髪を血溜まりに浸し、白い貫頭衣を赤く染めたその姿は、死体か、さもなくば死に掛けているようにしか見えなかった。
が、その顔が、まるでわたしを待ってでもいたかのように持ち上がった。
無意識のうちに、わたしはその傍へと降りた。
そのときになって、わたしはその血溜まりが、子供のものでないと気付いた。
降りてくるまで乗っていた瓦礫。
その、元は大柱であったその下に、人がいた……らしい。
柱は、重すぎたのだ。人の形が残るには。

「腕?」

 伸ばした手は拒まれることなく、再び気付いた時には病院に収容されていた。
その時に、助けてくれた女の人……織部さんに、腕の話を聞かされた。
倒れていた私のすぐ傍に、おそらくは女性のものであろう腕が一本、落ちていたのだと。
その手は、何かを放り出す、あるいは突き飛ばす形に大きく開かれていたのだと。
腕の持ち主は……後の調査と残留思念掃討において、柱の下敷きになっていたのが確認された。
そのことから、私を連れての移動中に建物の崩壊に巻き込まれ、下敷きになりかけた時咄嗟に私だけを崩落の範囲から逃れさせたのではないか、ということだった。

「その人は最期に君を助けられて満足していたと思うよ」

 遺されたのは、右腕一本きり。
石の埃に汚れている以外は目立った傷もなく、その石粉によって彫刻のようにすら見えた。
手を開き、解き放つ形の、彫刻。
それはきっと、この子を柱の範囲から遠ざけたためにその形になった瞬間、命を失ったからなのだろう。
子供とはいえ、それなりの重量はある。
間に合わないと判断したとき、彼女は踏みとどまって思いっきり子供を遠くへ……。
敵対関係と呼べる間柄の結社ではあったが、子供を託されたような気がした。
 一般人には、能力者の使う回復は利かない。
わかってはいたが、祈るような気持ちで子供にむけて蟲たちを解き放った。
淡い光とともに蟲が小さな体にまとわりついて……その体にあった傷はおおかた消えてしまった。
この子は、能力者。それも年齢からして第二世代の能力者。たぶん、この結社唯一の第二世代。
 この姿で、この年で、この結社。……わたしと、同じ。
どんな能力をもっているかはわからなかったが、どんな扱いをされていたかはわかる。
【象徴的な道具】、だ。使い道は兵器。
思い込みかもしれない。次に眼を覚ましたときに、この子自身から否定されるかもしれない。
それでも。
わたしは過去の自分自身を拾い上げるような気持ちで、その子を抱き上げた。

「どうして? 私を助けたから死んだのに」

 その人の身元は教えてもらえなかった。だから、「お母さん」にあたる人だったのかはわからない。
たしかなのは、私を除いて全滅してしまった以上、「お父さん」も「お母さん」も本当にいなくなってしまったということ。
もともとそう呼んでも二人とも応えてくれなかったけれど、応えてくれるかもしれない未来ごと失ってしまうのとは、違う。
でも。
いなくなってしまったのに。
私の心は妙に凪いでいた。
揺れてくれなかった。苦しくもならなかった。
織部さんは、そんな私に、特に何も言わなかった。

「後始末するときに、その人らしいゴーストを見かけなかったから」

 わたしはあの子に、幾つか言わなかったことがある。
あの結社の書類を見てわかったことだが、一般人だったあの子の両親は、あの子を結社に差し出すことで、かなり高い地位を得ていた。
そして、もうひとつ。
わたしが後始末したゴーストの中に、あの子とよく似た面差しの男女のリビングデッドがいた。
互いに混ざり合い、さらには金庫を取り込む、深い執着をそのまま形にしたようなひどく浅ましい異形のゾンビ。
言わなくていい、知らなくていい。
そんなことが世の中にはある。幼い子供ならばなおのこと。

「もう少ししたら、学校へ行けるようになる。能力者がいられる学校があるらしい」

 髪を切ってもらって身軽になった。普通の服が着られるようになった。
戸籍がなかったので作ってもらって、そのとき、織部さんの名前を貰った。
……思えば、あの団体での私は名前すらなかった。
なんだ。「お父さん」も「お母さん」もいなくても、大丈夫なんだ。

「そこで、いろんなことを学んでおいで」

 わたしは身勝手なのかもしれない。
あの子に名前を押し付けて、過去のわたしが生きられなかった人生を歩ませようとしている。
それでも。幸せになってほしいと思う気持ちだけは本物だと、思いたい。

                     END

あとがき

 紗々と元紗々の独白を交代でお届けしました。
とりあえず、前の織部紗々さんが今の紗々に名前を譲ったのはこういう理由でした、ということを書きたかったのになんでこげに理由が書けていないとですか!
筆力欲しい…。

えー、ちなみに元紗々さん(29歳独身女性)の容姿は、今紗々の容姿をそのまま大人にした感じであったりするのです(笑)。
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【2007/03/24 18:31】 電網小話 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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  • ノホリと生きるネット中毒者。
    本を読んだり映画を見たりしてばっかりで、ネット外でも二次元にしか生きていないんじゃないかと思われがち。
    ……実際、それに近いです。

    なお、このページにおいてあるOMC作品(イラストやリンク先の小説)の著作権は株式会社クラウドゲート(旧名テラネッツ)および各作成者に、使用権はみかかに帰属します。
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