スポンサーサイト
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
【--/--/-- --:--】 スポンサー広告 |
『露草の原』
 露草のSSを書けたので、追記にぺたり。
アヤカシの声が聞こえるのは志体もちであるという設定があったので、そっちを下敷きにして。
設定のひとつを膨らませたらこんな感じになりました。
いずれはオドさんとか、ソルパコンバ巫女の子のを書いてみたいとこですが。
この次はタマのですかねぇ。

 タマといえば、今はいっている依頼が「完全隔離で人間兵器として育てられた子供たちがいる。その育て元の情報を得る為、「購入」した奴を捕縛せよ。ただし、子供たちが警備としてついている」という依頼なのですが……。
この依頼に対して「タマが思うところ」を表現するのに悩んで居たりします。
いや、ほぼ同じようなことをして、タマは「生き残り、腕を磨き続ければいずれは中忍、上忍へと育つ素材」へと「育てられた」のに対して、子供達はあくまでも「主に忠実な道具」として「作られた」というのがあって。
タマとしては、自分の存在そのものを逆撫でされているような気持ち悪さを感じている……わけですが。
それをどう表現するか、なんですよねぇ……。
必要があれば、「全部」片付けるのも厭わない「玄人」であるがゆえに、そんな感情を表に出してもいいものかどうなのか。
とりあえず、仮プレにはちょこちょこっと書いてしまったのですが。


『露草の原』


 雨が降っていたように思うのです。記憶の中の景色が白くけぶっているので。
けれど記憶というものは掴まえられないがゆえに不確かで、あやふやなもの。
だからその日は、本当は晴れていたのかも知れず……。
けぶっていたのは私の目の中だけだったのかもしれません。

 私は、ひとりぽっちで立っていたのだそうです。
手に露草の幾本かを握り締め、露草の群生のただなかに。
 おそらくは口減らしでしょう。
着ていたのはこざっぱりとしていて、きれいではあっても古びてくたびれ、おそらくは何人ものこどもに着せられてきただろう着物。
奉公に出す事もできないくらいの年頃のこどもです。
多少なりともきれいな格好をさせておけば拾ってもらいやすくなるとの、せめてもの親心だったのでしょうか。
それとも、死んだものと思って送り出した、精一杯の償いの死に装束だったのかもしれません。
今では、どちらなのか。それとも別の理由があったのかはもうわかりません。
たどる糸となるべきものを、その着物の他は何一つ持ってはいませんでしたから。
 その時、でした。音が聞こえたのは。
虻の群れがたてる音をご存知ですか?
ぅわん、と。
声や音はそも空気の震えと申しますが、まさしくあれは空気の震えが音になったような音。
最初はそれのように思えました。それも耳元ではなくやや離れた所で。
耳をすませると、それは震えから、音へと。
思えば景色の記憶は天気のことさえあやふやだというのに、音の記憶ばかり鮮明なのは、この時にじっと集中し続けたせいかもしれません。
強弱をつけつつも、一定の波長としか思えなかったものは、集中していくと聞き取れない声になりました。
遠くで誰かが話している。話してはいるけど、その中身までは聞き取れない。
ちょうどそんな感じです。
ひとりぽっちの心細さもあって、私は思わずそちらへと足を踏み出してしまったのです。
 一歩、一歩。
何も知らなくとも、本能がそうさせたのでしょう。足音を潜め、息すら殺して。
少しずつ少しずつ歩を進めるに従って、声は大きく、会話として聞こえるようになりました。
それとともに、鼻には鉄サビの臭いが。
「うまいのぅ」「うまいのぅ」「血が滴る」「骨もよい歯ごたえじゃわい」「腿をくれ」「髄と交換じゃ」「ならば腕もつけよ」「手はゆずらんぞ」「なら手首から先はお前のものじゃ」
会話の一言一句までも思い出せます。意味がわかったのは大きくなってからでしたけれど。
声を、会話を理解したとたん、それまで気にもしなかった音が声の合間合間に。
湿った重いものを裂く音。硬いものを別の硬いもので削るような音。
見てはいけない。
これ以上近寄ってはいけない。
何より、それが何かを理解してはいけない。
いけない。いけない。いけない。
近づいてはいけないのなら、どうすればいのか。どうするべきなのか。
逃げるのか、それとも向こうが立ち去るのを待つのか。
判断をより的確に下すには、私はこどもでありすぎました。
音も会話も聞きたくなくて、その場で耳を塞いで、眼を閉じてしまったのですから。
 がさりと草を踏む音は、露草を握り締めた手で覆っただけの耳に簡単に届きました。
両手で耳を塞いでいるから、覆うことの出来ない鼻へ届く鉄サビの臭いも強くなったことはいうまでもありません。
「おるな」「おるよ」「子供じゃ」「肉は柔らかい」「骨もみっしりとしておろう」「子供はうまい」「年寄りよりうまい」「しかもおなごじゃ」「なおうまかろうよ」
自分のことを言われているのだと、嫌でもわかりました。
思わずあけた目の前にいたのは、二頭の狼。
いいえ、口元を朱に染めたそれは狼の姿をしたアヤカシでした。
したりしたりと露草の原を踏みしめ、近づいてくるソレは、狼の顔をしているくせにじったりと笑ったように思えました。
さんざん怯えさせてから、喰う。
それがアヤカシの食事です。
何もわからないうちに、頭からがぶりとやってしまっては、恐怖は味わえないのでしょう。
「わしは頭からじゃ」「なら、わしは腹からじゃ」
わざとらしいほどゆっくりと近寄り、前と後ろを塞ぐと二頭は大きく口をあけました。
鬼灯を裂いて内側へ貼り付けたような、真っ赤な口。
それが大きく広がりきった時、私はようやく再び目を閉じる事ができました。
あの口の内側にぞろりと並んだ、黄色い牙がこれ以上近寄ってくるのだけは見たくなかったのです。
 ばづん。
雨で芯まで濡れた太い縄を、一気に断ち切るような音。
あ、千切れた。
音を耳にして思ったのは、そんな一言でした。
体が痛くないのは、あっというまに死んでしまったからに違いない。
もう一度。ばづん。
おかしい。どうしてもう一回聞こえるんだろう。
「大丈夫……?」
 おそるおそる目をあけると、そこにいたのは普通の、いえ、少し武装した女の人でした。
後からわかったことですが、彼女は仕事帰りの開拓者。
彼女はゆっくりと私の目の前で手を開き、振って見せました。
「見える?」
アヤカシを前に逃げようともしなかったことから、視力を疑われてしまったようでした。
あるいは、恐怖で正気を失ったかを。
 生きている。助かった。
そう理解したとたん、目の前の人が纏っていた赤も、一面の露草の緑と青も、しまいには音も遠のいて……私は、失神してしまったのでした。
その人が、私に露草と改めて名をつけ、都へと連れて行ってくれたおかげで、今私はここにいるというわけです。

 アヤカシに喰われた人のことは、何も……。
そも、元が何人であったのかすらわからないのだそうです。
私を置いていった、父母だったのかもしれませんが、わかるようなものはすべてアヤカシが喰らってしまいました。
でもできれば、父母ではないと、あの人は私が置いていかれる前から死んでいたのだと、思いたいのです。
父母が、いるかわからないけれど兄弟が、今でも天儀のどこかで生きているのだと。
スポンサーサイト
【2010/05/22 16:04】 電網小話 | トラックバック(0) | コメント(0) |
<<【孤栖符礼屋】集客作戦 | ホーム | 職場にて>>
コメント
コメントの投稿











管理者にだけ表示を許可する

トラックバック
トラックバックURL
http://fujio3.blog10.fc2.com/tb.php/1607-8e8c5ff7
雑事押入


日記と本の感想と映画の感想とWTと…。ごちゃごちゃつっこんだ押入です。


CALENDER
06 | 2017/07 | 08
S M T W T F S
- - - - - - 1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31 - - - - -
RECENT ENTRIES
  • 雑事押入ごあんない(01/23)
  • おわりましたねぇ(07/23)
  • お引越しのおしらせ(06/14)
  • せっせせっせと(04/30)
  • ここんとこ(04/02)
  • RECENT COMMENTS
  • ハイゴ(01/08)
  • みかか(12/17)
  • 田吾作(12/16)
  • みかか(11/21)
  • 田吾作(11/21)
  • みかか(11/18)
  • 田吾作(11/17)
  • RECENT TRACKBACKS
  • まっとめBLOG速報:まとめ【おわりましたねぇ】(11/14)
  • 天然石・パワーストーンのクリムゾン:願いが叶う!天然石・パワーストーン(04/12)
  • パワーストーン活用術:パワーストーン使い方の意味を知る実践&活用術(04/08)
  • アマゾン探検隊:李家幽竹 花風水カレンダー2010 |李家幽竹(11/28)
  • 粋な提案:シュミじゃないんだ 三浦しをん(08/29)
  • ARCHIVES
  • 2016年01月 (1)
  • 2012年07月 (1)
  • 2012年06月 (1)
  • 2012年04月 (2)
  • 2012年03月 (1)
  • 2012年02月 (1)
  • 2012年01月 (2)
  • 2011年12月 (2)
  • 2011年11月 (3)
  • 2011年10月 (4)
  • 2011年09月 (9)
  • 2011年08月 (9)
  • 2011年07月 (11)
  • 2011年06月 (12)
  • 2011年05月 (16)
  • 2011年04月 (19)
  • 2011年03月 (22)
  • 2011年02月 (22)
  • 2011年01月 (24)
  • 2010年12月 (26)
  • 2010年11月 (15)
  • 2010年10月 (15)
  • 2010年09月 (15)
  • 2010年08月 (17)
  • 2010年07月 (17)
  • 2010年06月 (19)
  • 2010年05月 (20)
  • 2010年04月 (16)
  • 2010年03月 (19)
  • 2010年02月 (20)
  • 2010年01月 (18)
  • 2009年12月 (22)
  • 2009年11月 (18)
  • 2009年10月 (16)
  • 2009年09月 (18)
  • 2009年08月 (20)
  • 2009年07月 (22)
  • 2009年06月 (22)
  • 2009年05月 (20)
  • 2009年04月 (22)
  • 2009年03月 (23)
  • 2009年02月 (21)
  • 2009年01月 (26)
  • 2008年12月 (27)
  • 2008年11月 (25)
  • 2008年10月 (21)
  • 2008年09月 (20)
  • 2008年08月 (21)
  • 2008年07月 (23)
  • 2008年06月 (25)
  • 2008年05月 (23)
  • 2008年04月 (24)
  • 2008年03月 (22)
  • 2008年02月 (25)
  • 2008年01月 (25)
  • 2007年12月 (26)
  • 2007年11月 (24)
  • 2007年10月 (26)
  • 2007年09月 (23)
  • 2007年08月 (29)
  • 2007年07月 (24)
  • 2007年06月 (29)
  • 2007年05月 (25)
  • 2007年04月 (30)
  • 2007年03月 (32)
  • 2007年02月 (32)
  • 2007年01月 (33)
  • 2006年12月 (25)
  • 2006年11月 (31)
  • 2006年10月 (31)
  • 2006年09月 (33)
  • 2006年08月 (33)
  • 2006年07月 (36)
  • 2006年06月 (23)
  • 2006年05月 (25)
  • 2006年04月 (32)
  • 2006年03月 (31)
  • 2006年02月 (31)
  • 2006年01月 (36)
  • 2005年12月 (32)
  • 2005年11月 (39)
  • 2005年10月 (32)
  • 2005年09月 (33)
  • 2005年08月 (28)
  • 2005年07月 (39)
  • 2005年06月 (45)
  • 2005年05月 (30)
  • CATEGORY
  • はじめに (1)
  • 日々雑事 (452)
  • 本読独言 (41)
  • 映画独言 (10)
  • 東京怪談 (78)
  • 螺旋鉄路 (23)
  • 銀幕浪漫 (305)
  • 天儀冒険 (188)
  • 阿修羅戯 (422)
  • 虹卵部屋 (7)
  • 銀雨伝奇 (242)
  • 終焉突破 (6)
  • 無限幻想 (21)
  • 仮想人物 (10)
  • 竜之咆哮 (42)
  • 電網小話 (37)
  • 独自小話 (3)
  • LINKS
  • 舵天照
  • 東京怪談
  • シルバーレイン
  • 螺旋特急ロストレイル
  • 銀幕★輪舞曲
  • 楽園道標。
  • 混沌の迷宮
  • 下を見るな。前を向け。
  • ぱとりしあ・まんぼう みにまむ
  • 海瓜工場
  • 孟宗柳(誤変換)
  • 神無月ジャンクション・弐改
  • いぬのあしあと。
  • すきまのことだま
  • 田吾作な日々。
  • 猫の集会所
  • BURNING UP FOR YOU
  • パスタを食べようぜ2010
  • 黒木さんち。
  • 大滝屋
  • 果涯の庭園
  • 夜明けの鮮烈
  • 天上の睡蓮
  • 梅爺の鼻唄
  • SEARCH

    PROFILE
    みかか
  • Author:みかか
  • ノホリと生きるネット中毒者。
    本を読んだり映画を見たりしてばっかりで、ネット外でも二次元にしか生きていないんじゃないかと思われがち。
    ……実際、それに近いです。

    なお、このページにおいてあるOMC作品(イラストやリンク先の小説)の著作権は株式会社クラウドゲート(旧名テラネッツ)および各作成者に、使用権はみかかに帰属します。
    作品の改造行為、無断転載は禁止されています。

    加えて、株式会社トミーウォーカーのPBW『無限のファンタジア』『シルバーレイン』『エンドブレイカー!』のイラストの使用権はみかかに、著作権は作成イラストマスターに、全ての権利は株式会社トミーウォーカーが所有します


    リンクはご連絡貰うと、貼り返します。ぺたりと。
  • RSS1.0
  • 上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。