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空を見に
 ふと思いついて書き始めたら、綺麗に筆がノリノリになったエンドブレイカーのSSです。
ティアルが初めて空を見た日のことなぞ。
エンブレ!、図書館が無いから世界観はひねり出しております。
だから、スカイランナー用キャットウォークが城塞都市外壁にある、というのは私の完全妄想です。
でもあったらいいなぁ。

キリエくんのPL様、ご協力ありがとー!
こんな感じになりました。


空を見に

 最下層、と城砦都市で呼ばれる場所はたいてい「あまり条件がよくない」場所だ。
たとえばそれはダンジョンと床板一枚程度でしか隔てられていない住環境。
あるいは犯罪が多発する危険。
そして何より、そこには空が無い。
光はある。新鮮な空気もある。けれど空は無い。
上を見上げた時の、上層と最下層のその決定的な違い。
「そらってなんだろう?」
 ティアルが生まれ育った町は最下層の中でも比較的平穏で、子供が外で遊べる程度には治安も良かった。
ダンジョンへの出入りがしっかりと防がれていたからかもしれない。
しかしそれでも、やはりその町に空は無かった。
幼いティアルは空色に塗られた天井を見ては、首をかしげたものだった。
本当に、こんな色が頭の上いっぱいに広がっていて、それでもそれは天井じゃないの?
次第にその疑問は確かめてみたいという思いに変わり、きっと確かめるという決意へと育っていった。

 ティアルが『空見』を決行したのは、15歳になった翌日。
城砦都市の内部階段をひたすらに登って行く。ある程度までは、これで移動できるのだ。
でもその「ある程度」以上…富裕層のいる上層には?
そういう上層は高級住宅地だ。セキュリティもしっかりしている。
何より空気が違うのだ。仕事以外で中を歩くのはおかしいかもしれない。
そんな「上層」にまで来て、彼女は足を止めた。
どうしよう。
……ここからでも、一応空色は見える。だけど、見えるだけ。
建物が細切れにしてしまっているのだ。天井のように広がった空ではない。
空はひたすらに、遠い。
 思い切って、ティアルはすぐ近くにあったスカイランナーのための通用口から外壁部分へと出てみた。
その、瞬間。
今の今までたしかに「足元」にあった地面は消失した。
いや、「地面」は存在する。ただし、はるか下方に。
振り返れば、ティアルが足を踏み出すまでの地面はそこにある。
けれどそれは「地面」ではない。階層でしかないということを、この時彼女は初めて実感し、理解した。
では、ここは「空」か?
違う、と彼女の心の中の何かが否定した。
たしかに向こう側、ずっとずっと向こうの視線の先は「空色」をしている。
だけど、まだ上がある。自分が背中を預けている壁の上がある。
だから、登らなくっちゃ。
震えそうな足で、細い―――洗濯紐の上すら走れるスカイランナーに、大人2人が歩けるような廊下は必要ない―――猫走りを踏みしめて、彼女は外壁部に張り付くようにして移動した。
さらに上に登るのなら、足がかりになるようなものが絶対に必要だ。
本来の使用者であるスカイランナーから見ればカタツムリほどの速度で、彼女は壁に設置された梯子まで辿りついた。
コの字型に出っ張るように鉄棒を埋め込んだだけの梯子だが、上に行くには十分足りる。
しっかりと段に足をかける。手で次を掴む。
それだけを考えてティアルは登り始めた。どこが終わりかとか、考えないように。
ずっと階段を登り続けてきた疲労が、逆に少女の背を押したのだ。
ここまできて、諦めたくない。
それでも一度踏み外すのが怖くて下を向いて確かめようとしたら、嫌でも高さを意識させられて、あやうく足が止まりそうになった。
ここで足を止めたら、きっと上にも下にも行けなくなる。
その一念だけで、なんとかもう一度進み始められたけれど。
 三階建ての建物くらいはこの梯子を登ったと思った頃、ティアルの手は建物の縁へとかかった。
たぶんこれも足がかり。この上に建物はまだ続いているから一息つこう。
期待を抑えるようにそう考え、目さえもつぶって顔を出したその先に、次に登るべき壁はなかった。
建物もなかった。
そこは出っ張りやひさしや、そんなものではなかった。
 目の前に、蒼が広がる。
その下にあるのは「地面」ではなく、そうなる前の「屋上」ばかり。
そして頭上にも、一面の蒼。
その日、空は晴れ渡っていた。一切れの雲さえなかった。
 体ごとのぼりきって、ティアルはぺたんとしりもちをついた。
これが、「空」。ほんものの、「空色」。
ころりと屋上に転がれば、空しか見えない。
今、「空」のただなかにいる……。

「風邪ひくぞ」
 ひょいと見知った少年の顔が視界に入ってきて、ティアルは目をまたたかせた。
あの日登りつめた階段室の屋上はまだ屋上のまま。
「地面」も作られてはいない。
しかし、ティアルはよくここに登ってくるようになったし、それを楽しめるほどには登頂に慣れた。
それと……「空」を認識した瞬間だろうか。彼女にエンドブレイカーの力が備わったのは。
今顔を覗き込んだ少年も、その縁故でであった。
「……あれ? もうそんな時間なんだ」
体を起こしたティアルは、そのまままじまじと少年を見つめた。
「何か、ついてるか?」
「えっとね、今気付いたんだけど、キリエの髪、今の空の色と同じだね」
夕の月を浮かべ、最後の日の欠片に紫に染まった空。
戸惑う少年、キリエの髪がそれと同じだと彼女は笑った。きれいな色だよね、とも。
 思わず黙りこくったキリエが、もしあの日、自分の目を見ていたらどうなったろうとティアルは思った。
あの日、自分の目の中に宿っていたのはきっと、エンドブレイカーになるエンディング。
もしかしていっしょに登ってくれたかな?
そしたら、あの「地面が消えた」時も、みっともないくらい怖がらずにすんだかな?
恐怖の軽減もそうだけれど、なにより……
「とにかく! ……もうじき足元も見えなくなるんだから帰ろう」
差し出された手に掴まって立てば、確かに空には星が現れ始めている。
夕日の欠片も消えて、空が濃紺に変わりきるまでにそう時間は残されていない。
2人は急いで梯子へと向かった。
星明りも月光もあっても、それでも夜の暗い中であの梯子段を下りるのは御免被りたい。
それでも。
ティアルは振り返る。
なにより、空を初めて見たあの時の気持ちを共有できたかもしれない。だから
「キリエ、今度はいっしょに空を見に来ようね」
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【2010/03/20 16:30】 終焉突破 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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    みかか
  • Author:みかか
  • ノホリと生きるネット中毒者。
    本を読んだり映画を見たりしてばっかりで、ネット外でも二次元にしか生きていないんじゃないかと思われがち。
    ……実際、それに近いです。

    なお、このページにおいてあるOMC作品(イラストやリンク先の小説)の著作権は株式会社クラウドゲート(旧名テラネッツ)および各作成者に、使用権はみかかに帰属します。
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